教授からのご挨拶

患者様の幸せにつながる正確な病理診断と新規治療法の確立をめざして

 われわれは病理学的研究を通じて、疾患の病態の本質を解明すると同時に、新規治療/診断法の確立をめざしております。そして、その研究成果が患者様の幸せに貢献できることを切望しております。当講座では、1. 糖尿病の病理学的研究、2. 悪性リンパ腫をはじめとする腫瘍病理学的研究、3. 分子病理学を応用した病理診断の確立というテーマで研究を行っております。特に、1の糖尿病を病理学的に研究するという試みは、世界的にもユニークなものです。日本では当講座のみが専門に行っており、これまで数多くの業績を出しております。また、2の腫瘍病理学的研究ついては、当講座は歴史的に造血器/網内系腫瘍、内分泌腫瘍、膵腫瘍などの研究から多くの業績をだしてまいりました。3の分子病理学的診断を応用しながら、腫瘍病理学的研究を進めております。

 また、後進の病理研究者の育成も大学における大事な使命です。医者、特に病理医は臨床家であると同時に研究者でなければなりません。病理標本で直面した様々な疑問を文献を引いて調べるのみならず、自分の手を動かし疑問を解決することができるようにする必要があります。そのためにも、分子病態病理学講座では関連病院、共同研究者と連帯して、海外/国内留学、学会参加を含めた充実したカリキュラムを提供して学生、若手医師を病理研究者として育成しています。

 一人前の病理医になるには臨床医に比べ長い年月がかかります。たしかに覚えることも多く、十分な症例数、病理解剖の経験が必要となります。我々の講座では、なるべく楽しく、興味を持って病理学の勉強をできるよう工夫をしております。具体的には大学における日常診断、カンファレンス、抄読会(基礎、臨床)に加え、多くの当講座の関連病院と連携しながら病理医の教育、診断技術の向上を進めております。当講座では函館、北秋田、青森に多数の関連病院があります。各拠点病院では、それぞれ経験充分な当講座同窓会の先生方が赴任しております。そこでは大学とはまた違った視点で病理診断の指導を受けることができます。各病院で働いている先生方と大学の結びつきは強く、我々大学スタッフと一丸となって、青森、北秋田、函館地域の医療の向上に努めております。また、必要ならば、海外で病理診断を勉強することも可能です。

 “病理は難しい、学生実習で苦労したからちょっと”という方もぜひ我々の教室を覗いてみてください。やる気さえあれば、成績はまったく関係ありません。また、女性の方も大歓迎です。当講座には2名の女性病理医が所属しております。診断、研究のみならず、子育てにも大活躍しております。同窓会の強力なバックアップのもと分子病態病理学講座全体で皆様を指導させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。


弘前大学大学院医学研究科
分子病態病理学講座

教授  水上 浩哉